坊さん座談会
〜仏教的にLGBTってどうなのか、聞いてきました〜
モテないから出家したいんですけど…
- 金沢
- 実は、もう一つ相談したいことを、友人から預かってきているんですが、いいですか?
- 本多・大澤
- 是非ぜひ。
- 金沢
- 太田と私の友人のゲイなんですが、彼はモテなくて出家を検討しているんですね。自分の幸せを突き詰めて考えた時、それはイケメンに愛された状態であるのだという結論に至ったが、自分が理想とするような相手からは袖にされてばかりいる、と。それで、煩悩を捨て去り出家することも選択肢としてあり得るのかもしれない、と思っているみたいなんです。僧侶のお二人は、このような理由で出家を考えることをどう思われますか。
- 太田
- いや、マジ出家なめんなよ。
- 一同
- (笑)
- 本多
- う~ん、……出家したいんならすればいいんじゃないかな、と思います。
- 金沢
- なるほど。出家推奨ということですね。なぜでしょうか。
- 本多
- 私の好きな言葉に「一発菩提心を百千万発するなり」という言葉があるんですけど、仏教を学びたい、出家したいと1回でも思うことは千や万の学びたい気持ちにつながる。だから、1回のやる気をおろそかにしちゃいかんよという意味の言葉です。なので最初の一回目が「モテたい」に疲れた、でも構いません。
- 金沢
- 本当ですか?モテようとする努力に疲れただけでもいいんですか!?
- 太田
- なんで、そんな熱こもってんの(笑)。
- 大澤
- お釈迦様自身も「結局生きてるって何なの」みたいなことで思い悩んで、そういう苦しみから抜け出すために出家をしたんです。そのきっかけは何でもいいと思うんですよ。何がその人の苦しみでも。「なんで世の中は弱肉強食なのか」って思い悩んで、こんな世の中イヤだって出家するもよし、「俺はイケメンに愛されたいのに、誰も愛してくれないからもうイヤだ」って出家するもよし。
- 太田
- やっぱり、よしなんですね!
- 金沢
- そんな理由でも受け入れてくれるとは…。
- 大澤
- もちろん。煩悩のあり方っていうのは人それぞれ違うので、それはそれでいいんですよ。
仏教、思いのほか自由だった
- 太田
- なるほど〜。でもあいつ、またモテたくなるやろ、どうすんねん、その時(笑)。
- 金沢
- 還俗があるんじゃない?
- 本多
- そうなんです。俗に還れるんです。
- 金沢
- 古典を読んでるとよく出てきますよね。出家したけど俗世が恋しいから戻りますね俗世に、って感じで。
- 太田
- 軽いな~(笑)。そんなのあるんだ。
- 本多
- まあ現代日本ではあまり還俗はなされないんですけどね。
- 金沢
- それって、一回僧侶になってから一般社会に戻って働くことが現代では難しいだとか、そういうことなんですか?
- 本多
- いや難しくないというか、その逆なんです。世俗に戻りたくなったらそのまま髪を伸ばして戻っちゃえばいいよっていう感じになっていて、改めて儀式を執り行ってきっちり還俗する人が少ないんです。
- 金沢
- なるほど。事実上還俗してるけど、お坊さんの資格は失わないってことですね。
- 本多
- そうそう。とりあえず辞めたけどお坊さんの資格はもってる、みたいな。
- 太田
- そういう人って実際にいるんですか?
- 本多
- 全然いますよ~。
- 金沢
- か、軽い……(笑)