「レアキャラは嫌だ、“ふつう”が良い」10代LGBTが今思うこと。
10年前も今も、学校は「好きだなんて言えない」場所。

- 皆の話を聞いてると、オンラインでは楽しく活動してるな思ったんだけど。実生活ではどうなのかな?例えば学校とか。

- うーん。私の学校は自分を曝け出せるような雰囲気じゃないと思います。友達が「周りにレズビアンがいてもいいけど、自分に好意が向いたら嫌だな」って話しているのを聞いたこともあるし。

- そんなこと聞いたら、絶対に言えないって思うよね。

- 親友にカミングアウトしようと迷った時期もあったんですけど、この話を聞いて怖くなってしまって、言うのをやめました。実際、親友のことを好きな気持ちもあったので尚更。

- 万が一バレて、ネガティブなイメージが広まってしまったら、3年間ずっとそれが定着してしまうかもしれないもんね。

- うん。学校ってすごく閉鎖的な空間だし、そう簡単には言えないよね。

- 私も学校では言えてないです。部活の先輩が好きになってしまった時期も、それを隠すために彼氏がいるって嘘をついて誤魔化していました。好きなのがバレちゃうのが怖くて。

- 好きだからこそバレたくない気持ち、めっちゃ分かるよ。

- なんかネットで居場所が増えても、学校が「好きだなんて言えない場所」であることは変わってないんだね。やっぱり、まだまだ課題だらけだな。

- そうだね。そこは僕らの時代と全然変わってないね。学校だとどうしても友だちと恋愛のことを話す機会が多いと思うけど、そんな時みんなどうしてるの?

- 私は、高校のときは男子を好きだったこともあって。その人のことを今でも好きっていうことにしてます。実際に好きだったことがあったから、話しやすいし。

- わかるわ〜。僕も嘘苦手だから、学生時代はゲイだと自覚する前に付き合ってた彼女のことを話すようにしてた(笑)。

- いつの時代もあるあるなんだね。
“ふつう”な人として描いてほしい。
りゅうちぇるは私の学校にいないから。

- なんか今ってある意味LGBTブームじゃん。至るところでLGBTの話題が出るし。例えば教科書にもLGBTが載ってる。それこそ、10代のアイコンにりゅうちぇるさん、けみおさん、ぺえさんみたいに”ジェンダーレス男子”って言われる人も出てきてるし。そんな状況でもまだ皆学校の言いづらい雰囲気は変わってないんだね。

- たしかにね。そもそも、10代の子にとって彼らはどんな存在なんだろうね。

- うーん、私は自分とは別の世界の人って感じがするかも。テレビのキャラクターだなあという感じで、身近ではないというか。

- あくまで画面の向こうの人という感じか。

- はい。皆りゅうちぇるさんとかのことは大好きだと思うんですよ。けど、周りにジェンダーレスな格好をしている子もいないから。友達の間ではLGBTがからかいの的になることもありますし。

- なるほどー…。”ジェンダーレス”という概念は、10代のLGBTに対する認識をそんなに変えてないのか。

- 少しはあるのかもしれませんけど。

- けど、そうだよね。俺がもし今10代でもTVの中の世界って感じたと思う。

- そしたら10代の意識を変えうるコンテンツってどんなのがあるんだろうね。「おっさんずラブ」もどっちかと言うと大人向きのコンテンツだしさ。なにかアイディアあったりする?

- 映画とかいいかなって思います。この間カミングアウトしていない姉と一緒に『アバウトレイ』を観にいったんですよ。

- トランスジェンダーの子のお話だったよね。

- そうです。あれみたいにLGBTを題材にした10代の話は、わかりやすくて良いなって思いました。観終わった後の姉の反応が心配だったんですけど、「こんな生き方もあるよね」てすごくポジティブな感想を言ってて。映画のおかげで姉もLGBTに対する理解が深まったんだなと思いました。

- へ〜!素敵だね。しかも、あの映画は主人公が異質な存在として描かれていなくて、どこにでもいるキャラクターとして描かれてたのが良かったよね。

- だからなおちゃんのお姉さんも共感しやすかったのかもしれないね。

- そうだと思います。

- たしかに、LGBTがレアキャラとして描かれると、大多数の人は「自分とは違う世界の人だ」と一線を引いてしまうもんね。

- そう思います。あと、前に『確信』のYouTubeコメント欄に「僕達と同じようにLGBTの人も恋をしたらもどかしい気持ちになるんだ」ってストレートの人からのコメントを見つけたんですけど。

- めっちゃ見てくれてありがと〜。

- その時も「同じって思ってもらえた」ってすごく嬉しかったんです。確信の主人公も誰にでも共感してもらえるような普通の少年だったから、皆が感情移入しやすかったんだと思います。

- それは些細な言葉だけど、凄くうれしいコメントだよね。

- なんていうか、“ふつう”な感じがいいよね。

- “ふつう”がいいです。

- うん、“ふつう”がいい。

- そうだよね、“ふつう”がいいよな〜!分かる。

- そう言えば、私のクラスで『ピー・エス・エス』ブームが起こったんですよ、面白いねって。だから、「面白さ」もクラスの皆にLGBTに親しみをもってもらうために大事なことなのかなと思います。

- ちょっと、あり美の回し者みたいなこと言うじゃん…!!

- いや、まず感謝しろ?でも、教室でバズったの嬉しすぎるね。どういう経緯なの?

- 私がクラスのグループラインに「この動画面白い」ってシェアしたんです。そこから皆がハマって。振り付けやラップを真似したりするブームが起きました。

- まちちゃんがシェアしたんだ?ちょっと勇気がいらなかった?LGBTのコンテンツだし。

- そんなことなかったです。面白くない?ってシェアしたので、「LGBTの何か」みたいなには思われないだろうなって思ったんですよ。みんなも実際に面白がってくれて、内容がパートナーシップのことでも、嫌悪感を持たずに身近に感じてくれたのかなと思います。

- 『確信』も『ピー・エス・エス』も…。オジさん本当に嬉しいわ。

- オバさんかな?
初めてのお付き合いはすぐに終わった。
お父さんを悲しませたくなくて。

- みんなは家族には自分のセクシュアリティのことを話してる?

- 私は言えてないです。

- そうかそうか。

- 私は少し前に、家族に自分のことを話しました。

- そうなんだね。

- 私はXジェンダーで、自分のことを男とも女とも思っているんですけど。それを母に伝えたら「昔から人形もプラモデルも両方好きだったし、小さい頃からそうだったんだね。」と言われて。

- すごく素敵な親御さんだね。

- けど、Xジェンダーを親に説明するのはすごく大変でした。1回では理解してもらえなくて結局3回くらい説明して。「男でも女でもいいなら、女であればいいじゃない」と言われた時もあって。

- 父も理解はしてくれているんですけど、それでもまだ、「娘だから可愛くあって欲しい」と思っているみたいです。かっこいいねって言ってほしい時に、可愛いねって言ってくるし。

- そうかー。でもまず、3回も話したのがすごい立派だよね。

- うん。立派すぎる。お父さんも知らないことも多いだろうし、これから少しずつでも勉強してくれるといいよね。

- そうですね。

- 私も言えてないです。というか、とてもじゃないけど言えないなって思います。TVでLGBTの話題が出ると毎回お父さんが「別にいいと思うけど、自分は理解できないな」って険しい顔をしながら言うんですよ。

- あー、そういう反応が地味にずっしりダメージになるよね。

- そうなんです。実は私、1度だけ女の人とお付き合いまで進展したことがあるんですけど、お父さんがそう言ってたのを思い出して、付き合った途端に親に対してすごい罪悪感が湧いてきたんです。お父さん、悲しむんじゃないかなって。

- つらかったよね。

- そうですね。相手のことは好きだったけど、親のことを思ったらどうしていいか分からなくなって。スグに別れてしまいました。
初めて人とお付き合いをした時だったし、パニックになってたっていうのもあるのかも。

- ご両親のこと、大事に思ってるんだね。

- はい。

- 優しいね。そもそも、LGBTとか関係なく、人と付き合うって大変なことだし、そこにまた別の問題が重なったらパニックになるのも無理ないよ。

- ありがとうございます。

- じゃあ…来週のデートに期待大…?(笑)

- はい(笑)。

- 楽しみだね。僕もそうだし、みんな色んなことを考えて葛藤して、最後は決めて、一歩ずつ進めたらいいよね。楽しんでね。