【中編】僕らは“LGBT”とまとめられて、まとまってみることにした
〜トランスジェンダーの井上さんと、ゲイの太田が、農家をはじめるまで〜
「心」に訴えかける何かは、きっと人を変える
- 太田
- じゃあ、この流れのまま「憧れのコミュニティ」に井上さんは出会えたかどうかについて聞きたいんですが、どうでしたか?
- 井上
- うーん、それでいくと、僕はそっちも見つけられなかったんだよね。
- 太田
- ていうか、井上さんは「憧れ」って大事やと思いますか?勝手に僕が言い切っちゃってますけど。
- 井上
- うん、それはめちゃくちゃ大事だと思うよ。太田は知ってるけど、僕は『GRAMMY TOKYO』っていうFtMが主役のクラブイベントのオーガナイザーもやっていて、それは自分らしく活躍するDJとかクラバーのFtMを集めて、若いFtMの子たちに「こんなやつもいるんだよ!」と見てもらいたくて始めたんだよね。もちろん全てのFtMにとって憧れられる存在になんてなれないけど、でも何かのきっかけにはなれるんじゃないかなって。
- 太田
- なるほど。そういうことがやりたいと思ったのは、きっかけがあるんですか?
- 井上
- それは、本業の『G-pit networks』の仕事をやっていたからだね。ジーピットは、悩みを抱えたトランスジェンダーの方向けに全国で無料相談会をやらせてもらってるんだけど、そこで僕は年間400人対応させてもらっていて。
- 太田
- 400人!!そんなにトランスの方に会ってるんですね!!
- 井上
- そうなんだよ。これまで1000人以上対応させていただいて分かったのは、「“頭”では自分がどうした方がいいのか分かってる」っていう方がたくさんいるってことだったんだよね。たとえば本人の意思が「適合手術を受けたい」と決まっているのに踏み出せない人ってたくさんいて、そういう方に何かを言葉で伝えるって難しい。僕らは「絶対にこちらから手術を勧めない。相談者の気持ちの整理のパートナーになる」って決めているから、無理に説得することはないんだけど、本人の“頭”じゃなくて“心”にひびく何かを作れれば、伝えられることもあるのかもと思うようになった。
- 太田
- そこでエンタテインメントだろ、と。
- 井上
- そう。自分らしく、楽しんで生きてるFtMに出会えるリアルイベントをやろうと思った。たとえ、ほんの数人だったとしても「こんな風になれるなら!」と背中を押すことができるかもしれないってね。メンバーの中にはホルモン治療だけで性別変更していないFtMもいるし、手術はしないって決めてる人もいる。「治療だけが全てじゃないし、自分らしいかっこよさで生きてる人がいるんだよ!自分らしくしていいんだよ!」っていうのを伝えたかった。まぁクラブイベントだから「チャラくて嫌だ」とか煙たがられることもあるんだけど。
- 太田
- 僕はさっき話したように「心ひかれる人・組織」に救いを求めてたので、すごく意義深いと思いますよ。最近は『SECRET GUYZ』とか、グラミーとはまた種類の違うFtMのかっこいいチームも出て来て素敵ですよね。
- 井上
- そうそう!めちゃくちゃいいと思う。どんどんFtM、というかLGBTの若い子にとって憧れになるような人が出てくるといいよね。
- 「担い手の減る一次産業と、ありのままで働きたいLGBT当事者のマッチング」という可能性
- 偏見をなくすことは難しくても、きっと偏見をこえてつながることはできる
- 多様なセクシュアリティの人が「ともに作るから、分かり合える」コミュニティをつくりたい
- ねぇ太田、ゲイって、カミングアウトしなくても彼氏もゲイ友も作れるのに、なんで…?
- カミングアウトするゲイの比率は上がっていくんだろうと、太田は思ってる
- 井上さん、女の身体で生まれ、“男になる旅”をはじめて、今どこまで来たの?
- 「男の見た目」と「男の戸籍」を手に入れた後は、「男の過ごし方」を身につける日々に